Clomiphene
PCOS/クロミフェン療法
妊娠の成立は、女性の卵巣から卵が「排卵」されないことには始まりません。PCOSでは卵巣内に卵はたくさん存在するものの、毎周期の排卵が認められないことが問題となっています。(排卵しているかは基礎体温の高低が存在するかで確認できる)
そこで内服の「排卵誘発剤」と呼ばれる薬を服用して、人為的に「排卵の手助けをしていこう」という治療法がクロミフェン療法です。
クロミフェンとは経口製の排卵誘発剤の総合的な名前を指していて、1番広く処方されているのは「クロミッド」という商品名の薬です。不妊治療をしている人は、「クロミフェン」よりも「クロミッド」という言葉のほうがしっくりとくるかもしれません。
クロミフェンにはクロミッドの他にも、セロフェン、オリフェン、フェミロンなどの名前の薬がありますが、これらはどれも同様の効果を持ち、商品名によって薬の効き目に違いがあるわけではありません。
PCOS/クロミフェン療法
PCOSの排卵誘発の第1選択として、このクロミフェン療法が選ばれます。クロミフェン療法は、「第一度無月経」と呼ばれる軽度の排卵障害に有効で、症状が重い「視床下部性第2度無月経」ではゴナドトロピン療法が選択されます。
クロミフェン療法の排卵誘発率は70〜80%程度となり、そのうち妊娠率は10〜30%と考えられています。これはPCOSを伴っていない患者のクロミフェン服用時と比較すると、若干低めの数値になっているようです。
クロミフェンの効果
クロミフェンは脳の視床下部に働き、FSHとLHを分泌させることによって排卵を起こします。排卵誘発剤という名前ではありますが、直接的には排卵させる効果よりも卵を成熟させるための薬と考えておけばいいでしょう。
PCOSでは卵巣内に卵がたくさん存在はしているのですが、その1つ1つがうまく成長できないことが多いのです。そこで排卵誘発剤を服用することによって、主席卵胞を作り出すのです。
主席卵胞とは排卵するために選ばれた卵のことで、卵がたくさんあっても主席卵胞が存在しないことには排卵は起きません。
排卵する卵胞の大きさは多少の個人差があるものの、通常ですと20ミリ前後になります。しかしクロミフェンを服用した周期では、少し大きい状態で排卵することが知られています。(30ミリ近くになることも)
クロミフェンの用量や使用日
クロミッド錠(1錠/50mg)を月経周期の5日目から5日間、連続で内服します。一般的には月経周期の5日目から飲み始めますが、3日目、あるいは4日目から飲み始める場合もあります。
開始日の微妙な違いについてですが、それによって「目立った差が見られない」というデータがありますので神経質になる必要はないでしょう。
クロミッド錠の用量につきましては1錠(50mg)から開始するのが一般的で、卵胞発育が見られない症例では次回から、2錠、あるいは3錠と増量していくことになります。
クロミフェンの副作用
顔面紅潮感が5.4%、卵巣腫大が2.9%、下腹痛が2.2%、吐き気、嘔吐が2.0%、頻尿、尿量増加が1.5%、その他の頭痛、蕁麻疹、視覚障害、疲労感、神経興奮などが1%未満との報告があります。
OHSS(卵巣過剰刺激症候群)の発症率は0.4〜5%程度ですが、そのほとんどは軽症で、重症に陥るということは稀です。また双子などの多胎妊娠の確率は4〜5%程度となっています。(PCOS症例は若干高目になる)
またクロミッドを数周期以上に渡り連用すると、頸管粘液の減少、子宮内膜が薄くなると言った抗エストロゲン作用の副作用が起きやすくなります。
これらの対策としましては、シクロフェニル療法やゴナドトロピン療法への変更、あるいは人工授精などを選択していくことになります。
クロミフェンと排卵日
クロミッド錠を服用することによって排卵日が安定します。排卵例の約80%は投与開始後から、「12〜14日ごろ」排卵します。卵が十分に成長しているのに自然排卵が難しいときには、hCGという注射で排卵の手助けをすることになります。(クロミフェン+hCG療法:下記参照)
クロミッドの2段階投与
当サイトの掲示板では、クロミッドの2段階投与という治療法も書かれています。これは卵が思うように成長しない周期に、5日間の服用後にさらにまた5日間程度のクロミッドを服用する方法です。
しかし当サイトが参考にしている文献には、このクロミッドの2段階投与については書かれていません。薬の投与量が多くなることでデメリットが増えるクロミッド2段階投与は、積極的に行なわれている治療法とは言えないようです。
クロミッドと基礎体温
クロミッドが基礎体温に直接影響することはないようです。しかし卵胞期にいい卵が育つことから、結果として排卵後に基礎体温が少し高めになることがあります。これはいい卵が排卵した結果、卵胞が黄体化してプロゲステロン(黄体ホルモン)が十分に分泌されることが原因の1つです。
シクロフェニル療法
クロミフェン以外の排卵誘発剤に、「シクロフェニル(商品名:セキソビット)」と呼ばれる薬もあります。クロミッドよりもマイルドな薬で、副作用の心配がほとんどありません。
排卵誘発率はクロミッドよりも悪く50%程度ですが、頸管粘液の減少や子宮内膜が薄くなると言った副作用が起こりにくいのが特徴です。
クロミフェン使用上の注意
クロミフェンを始めて服用する周期では、慎重にその経過を観察するべきでしょう。卵胞の成長速度には個人差があり、その経過によって排卵日を予測することが大切です。またそうすることによってOHSS(卵巣過剰刺激症候群)などの異常が早期発見出来ることがあります。
妊娠中には催奇形性の危険があるため、クロミフェンを服用してはいけません。そのため基礎体温をしっかりと記録することが大切で、服用中に高温期が続く場合は医師に相談をしたほうがいいでしょう。
一般的にクロミフェンを3周期反復投与しても排卵が見られない場合は、他の治療法に変えるほうが望ましいと言われています。クロミフェンには副作用を伴うため、効果的ではない治療をいたずらに続けるべきではありません。
クロミフェン療法とバリエーション
クロミフェン単独
第1に行なわれる治療法です。軽度な排卵障害では、卵胞期にクロミフェンを服用することで排卵が起こるようになります。排卵するための「LHサージ」が得られていることがポイントとなります。
LHサージとは、排卵直前に黄体形成ホルモン(LH)が大量に分泌されることで、LHサージが起きるとその後の24〜36時間後に排卵します。
クロミフェン+hCG
十分なLHサージが得られないときにhCGという注射を打つことで、排卵の手助けをしてやります。卵胞の大きさが18〜22ミリ程度になったときにhCGを投与することによって、その後の24〜36時間後に排卵します。
クロミフェン+グルココルチコイド
PCOSは、アンドロゲン(男性ホルモン)が過剰に分泌されることが1つの問題だと考えられています。そこで副腎性アンドロゲンを抑制するために、グルココルチコイド(ステロイドホルモン)を併用することがあります。
プレドニン、あるいはデキサメタゾンという薬を周期2日目から10〜14日間服用することで、卵胞の発育や排卵が認められることがあります。
クロミフェン+ブロモクリプチン
PCOSでは約10〜20%程度に「高プロラクチン血症」を伴うことが知られています。高プロラクチン血症とはプロラクチンというホルモンが異常に高くなってしまい、排卵を妨げてしまう疾患です。
そこでブロモクリプチン(パーロデル)やテルグリド(テルロン)などの高プロラクチン血症改善薬を併用することで、排卵率の向上を期待します。
