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*この詩は若き医師がガンの発病によって自分の限られた命を知ったときに、家族へ残した愛の手記です。

あたりまえ

こんなすばらしいことを、
みんなはなぜよろこばないのでしょう。

あたりまえであることを。
お父さんがいる。お母さんがいる。

手が二本あって、足が二本ある。
行きたいところへ自分で歩いて行ける。
手を伸ばせばなんでもとれる。
音が聞こえて声がでる。

こんなしあわせはあるでしょうか。

しかし、だれもそれをよろばない。
あたりまえだ、と笑ってすます。

食事が食べられる。
夜になるとちゃんと眠れ、
そして、また、朝がくる。
空気を胸いっぱいにすえる。

笑える、泣ける、叫ぶこともできる。
走り回れる、
みんなあたりまえのこと。

こんなすばらしいことを、
みんなは決してよろこばない。

そのありがたさを知っているのは、
それをなくした人たちだけ。

なぜでしょう。あたりまえ。

『飛鳥へ そしてまだ見ぬ子へ』より


作者 井村和清
1947年、富山県生まれ。日大医学部卒業後、沖縄県立中部病院を経て、
岸和田徳洲会病院に内科医として勤務。

飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ
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